あるアナクロ技術者の日常のひとコマ

あるアナクロハードウェア技術者のちょっとした日常など

放熱を考慮した電源設計について考える

大本はここの話から。
一般的なATX電源というのは、3.3V/5V/12Vなどのボード上で使用する出力のほかに、Sub5V(名前は適当)のように常時出力する電源系統を別に持っています。
これは、Wiondows終了=電源OFFのようなことをするために必要な措置だからです。
最近のPCは家電化が進んで、リモコンなどによる電源のOn/Offを行っていますが、リモコンからの信号を処理する回路には電源が供給されていなければいけません。
これをSub5Vのような常時出力するもので補います。
他のメインの出力に関しては、この回路からの信号によって出力On/Offを制御すれば良いわけです。TVやビデオデッキをイメージすると理解しやすいと思います。


ただし、ここでエナジースターという規格を考慮する必要が出てきます。
これは、装置として見かけ上電源Offの時のAC電力が規定されているのですが、この電力値以下にするのには、この時点で電源での変換効率を高い状態にしなければ実現できません。
つまり、メインの系統はACラインのレベルでカットアウトし、Sub系のラインにだけ電力を供給しつつ、その効率を最大に定義する、という回路構成が必要となります。


AC電力はDC出力電力に電源のロスを加えた値となるので、仮にAC1W以下と規定されていた場合、AC電源の一般的な変換効率を約75%と仮定して考慮するとDCレベルでは0.75W以下にする必要が出てきます。
5Vで0.75Wということは、0.75/5=0.15A以下となり、ここに使用できる電流がどの程度のIC類を動作可能か想像してみると理解しやすいかも知れません。


ともかく、このような厳しい条件が与えられている出力に対して、2種類の電圧を用意するというのは非常に無駄が多いことになります。
ただ、あくまでもメインの系は信号によるOn/Off制御であるため、DC出力断とACの系分断との間に一定期間のディレイを設ける設計としておけば、ATX電源内のFANは、装置としての電源Off後も冷却できるまで稼動可能ということになります。
仮にこれと同じことをボード上で行うとすると、ドライブ用電源ラインとは別の系として確保し、その上で大容量のコンデンサを追加する等の措置が必要となります。場合によってはスーパーキャパシタのようなレベルが必要かも知れません。
つまり、常時出力に関しては単出力が基本であり、メインの系を利用するのはエナジースターという省電力に関する規格が満足できないことを意味します。


メインの回路が断する際、電源出力端でFETなどをスイッチ的に動作させ、電源内部的にディレイにて動作させるタイミングを設けることは比較的容易に実現できます。
そうすれば装置そのものの電源がOffしてもしばらくの間、電源に搭載されているFANが回転し続けることは可能です。
逆にケースに取り付けられているFANは電源の出力が断しているので、回転しません。
このFANを動作させる電源を電源として別出力で用意するのであれば、同じことを実現できると思います。


が、今度は別の問題が出てきます。
他の回路に干渉しないよう設計する必要がある、ということです。
つまり、ボード上の設計から含め、完全に別のラインで構築する必要が出てくるのですが、実現は容易に出来るかもしれませんが、実を言うとこれはATXの規格にはありません。
つまり、ATXという標準規格から外れた電源及び装置を設計することとなり、汎用化に伴うコストダウンから正反対の方向になっていることになります。


ちなみに、メインの系の出力は100Wや200Wが当たり前の世界なのですが、FAN一つを動作させるだけの電力をここから作り出そうとすると、効率は非常に悪い状態になり、このときの変換効率は50%以下というレベルに落ち込みます。
FAN自体の負荷がおおよそ電圧12Vで0.1Aピークという値になるはずで、この時点で1.2W付近まで考慮する必要があるということも含めて、こんな複雑な制御を実現させるのが非常に困難なことがわかってくると思います。
というわけで、ケースについてるFANは制御不能なんじゃないかと考えるわけです。


さて、ここで熱と言うものについて考えて見ましょう。
熱は電気によってCPUなどが動作したときに発生します。
で、放熱が稼動している間は一定値以下に確実になります。
でも熱は伝わるスピードが非常に遅いので、本体のFANが停止したときに停止後の熱量ではなく、終了処理のために一生懸命処理した時の熱が伝わってくるようなもので。
その両方をあわせると、どうしても電源Off直後に温度が上昇する、という結果になるかと。
…って、文章だけで書いて、えらい疲れた…ホントはもっと簡単に済ませるつもりだったのに…
…ま、多分これ読んでも理解できない人がいるんだろうな、とは思ってるので、本当の意味でちゃんとした説明はまだまだ先だな(苦笑)