あるアナクロ技術者の日常のひとコマ

あるアナクロハードウェア技術者のちょっとした日常など

BenQ P50の電池トラブルについて考える

見かける電池残量不安定の問題。
なまじこの辺に関わることの多い技術者として、原因推定をしてみる。
実を言うと、このトラブルが散見されるので、購入意欲は一気に消滅したのだが(苦笑)
まぁ、設計者視点で原因を絞り込んでみようと思う。


現象としては、電池残量が急激に変化する。
考えられる原因はいくつかある。
まずは残量について電池の電圧を監視し、その結果を反映しているものと考え検討を進める。

  • ソフトウェア的な問題

1.残量の監視を他の処理より後回しにしている場合。
この場合、純粋にOS上のアプリケーションとしての処理であるのならば回避可能。
逆に、ファームウェアレベルで作りこまれていた場合、ハードウェア的な改造も含めて対処する必要があるため、回避策は現状レベルではないに等しい。
これは装置としての仕様決定段階での検討漏れと見るべきであり、次モデル(設計がスタートしているようならアウトだが)に期待するほかない。

  • ハードウェア的な問題

1.電圧の監視精度が粗い場合。
この場合は、動作時の電圧落ち込みにより残量が減って見え、電圧落ち込みが回避されると復帰したように見える。
解決はA/D変換(アナログ→デジタル変換)部を大幅修正しない限り不可能。


2.電圧監視するポイントに問題がある場合。
例えば、電池端子のすぐそばで、電圧を安定させた上で監視しているのであれば誤検出を防げるが、これが他のポイント、例えばCPU付近等の場合、CPUの稼動状態によって電圧に影響を受けることになる。この状態では大幅なパターン変更を行う必要があり、その結果もたらされる影響を考えると、次機種に期待した方が早い可能性が高い。
もし仮にCPU自身がA/D変換機能を持っていて、その機能を利用している場合には、かなり致命的と言える。ハードウェア面だけでなく、ソフトウェア面でも大幅修正が必要になるので、次機種の設計が現段階でスタートしているとしたら、その次まで待った方が良いことになる。


3.上記に当てはまらない場合。
この場合は非常にやっかいなことになる。
というのも、電池の電圧監視ポイントに問題なく、ソフトウェア的にも回路的にも問題ないのに発生しているとしたら、原因はノイズ以外考えられない。
つまりこれが原因だとすると「P50はノイズに非常に弱い装置」ということになる。
内部的なノイズなのか、外来ノイズによるものなのかはわからないが、不定期に発生し、現象発生の条件に偏り等が見られなければ、この可能性が高い。
ノイズに弱いということは、実は裏を返すとノイズをかなりのレベルで放射していることにも繋がる。ラジオに近づける等した時のノイズが大きいようであれば、かなりの確立でビンゴと言うべきだろう。
回避策は…部品の実装レイアウト、パターンのアートワーク等々、徹底的に検証した上で再設計レベルで対策する必要があると言える。が、現時点のレベルで製品出荷されている実情を考えると、次機種に期待するには設計スキルが低いと言わざるを得ない。つまり、よほど技術スキルの高い技術者を他社から引き抜いてきて投入する等をしない限り、次機種も同じ問題を抱えるだろう、ということになる。


仮に、電圧監視によるものではないとしたらどうだろうか?
電圧監視でなければ、バッテリパックのデータを読み取っていることになる。
この場合、シリアル通信により残量情報(積算データ)をやり取りしていることになるはずだが、このデータ通信にノイズが入り誤検出するということを意味する。
この通信がミスをした結果が反映されているとしたら、データ通信のソフトウェア設計がノイズを考慮されていない非常にレベルの低い仕様になっているか、上記のノイズに対して非常に弱い設計であると言えるのだが、ソフトウェア設計に問題があった場合、実を言うともっと恐ろしい結末が待っていることになる。
バッテリ残量に関するデータ通信がノイズに弱いということであれば、それは充電に関しても同じことが言えるのである。
電池自体はリチウムイオン電池のはず。
ここで、リチウムイオン電池に対して絶対にやっちゃいけないこと、というのを一つだけ。
それは過充電。
残量監視が満足に出来ない状態だとすると、この過充電が発生する可能性が高いことになる。
では、過充電を行うとどのような結果が待っているか、について一言。
爆発。
真面目な話、電池は扱いに注意が必要な代物なのです。
ただ、CEマシンに関しては、基本的に電圧監視しているんだろうな、というのが率直な意見。
というのも、モバイルギアにしてもSgimarionにしても、電池残量モニタ類を見ているとわかるんだが、重いアプリを動かしたり通信したりしているときに残量がやや減って見えても、それらが終了すると若干回復する傾向があるから。
これは、バッテリパック自身の残量を通信して確認している場合にはあり得ない現象だから。
なんせパックでの残量監視は純粋に積算なので、減ったら減っただけで回復することはあり得ない。
これが電圧監視であれば、可能性は十分にある。
ということから、監視ポイントが悪いか、ノイズに弱いと言う可能性が否定できない。
が、一番可能性が高そうなのが、CPU内蔵のA/D変換を利用していてその精度が悪い、というパターン。
安価に、部品点数を少なく、とするとこの手のパターンは十分にありうる。
もっともCPUのスペックを確認してないのでA/D変換持ってるかはわからないのだけど←ダメじゃん(爆)