あるアナクロ技術者の日常のひとコマ

あるアナクロハードウェア技術者のちょっとした日常など

気付いたこと

まほぱぱのこの辺とかこの辺を読んで、更にリンク先も見て、気付いたことが一つ。
最近話題の姉歯事件でクローズアップされたような裏方技術者に対する評価が正当なものとはかけ離れている人事システムに問題がある
んじゃなかろうか、と。
これは、どの業界においてもかなりの割合であるんじゃないだろうか。
というのも、電機業界にいて電源なんて裏方中の裏方を担当していた立場からすると、電源関係の上司が電源のことを知っているわけがないのは当たり前で、他の技術者は上の評価を貰っているのが見て取れたのにも関わらず、底辺に近いレベルをうろつく羽目になっていたから。
そもそも、技術と言うものを知らない人から見れば、花形技術というような、目立つ内容を扱ってる人間を評価する方が簡単。
ましてや電源や、世間を騒がせている姉歯事件の強度設計などのように、地味で『問題を起こさないことが当たり前』な領域については、高い評価を出しにくい。
そうなると、自然、他の数値として評価しやすかったりする花形技術を扱ってる人間に高い評価を与える方が楽と言えるし、上位上司に対しても説明しやすい。
更に言えば、こんな裏方仕事を続けてるようなのは、文句が言えない奴か、自分のやってることに誇りを持って職人魂で仕事してるような変わり者くらいになる。
文句の言えない奴は別として。
職人魂で仕事してるような変わり者は、当然問題を起こさないために必要最低限のことを行うのが常であり、そうなると必然的に、彼らから見れば無理難題を言う「技術を分かってない奴」に対してはクレームをあげ、コスト度外視とも取れることを行う。
彼らからしてみれば必要最低限のコストであっても、技術を知らない人間から見れば不要なコストになる。
当然、花形の出世街道まっしぐらな方々からは「口うるさくて、コストのことを考えない扱いにくい人間」に見えることだろう。
そうなると、当然、この構図は更に加速し、最終的には職人魂で仕事をしている技術者は干され、外部の安いところに仕事が行くことになる。
安いところが技術力があるかないかに関しては、残念ながら技術力の低いところが多いのが実情。
だからこそ高いコストであっても『安心』を買えるのだが、そのことを知らない人間が見れば、当然安い方を選ぶ。
電機業界であれば、そこで問題が起こっても最悪リコールで済む。
が、実態は偶然にもリコールせずに済むということもありえるし、それによって技術力の低いところの『実績』が積み重ねられることも事実。
そうしたスパイラルが続けられれば、当然のごとく社内にその技術を知る人間が皆無になる。
いたとしても、閑職に追いやられているわけだから、当然その人間の声は届かない。
これ、文系だの、理系だのは無関係に発生しうる話なのです。
そもそも人事評価が満足に行われなかった日本型企業としては当然と言えば当然ですが。
実際のところ部下を正確に評価するスキルが圧倒的に不足している上司が多いし、そのための上司に対する教育も不足している。
『問題が起きないのが当たり前』な領域に対して、問題を起こさないでい続けること、を正しく評価するシステムを考えない限り、問題が起きた時点で大きなマイナスが付されるだけで、真っ当な評価がされないと分かっていればその仕事をしたいと思う人間は出てこない。
当然、家族を養うという重大な責務を負う立場になれば、なおさら自身のプライドなんかは捨ててでも、評価される仕事に移らざるを得ないだろう。
これからの社会、こういった裏方を正しく評価できるシステムが構築できている会社は安心だが、そうでない会社に関しては、類似した事例が山ほど出てくるんじゃないだろうか。
そう思わざるを得ないのが実情なんじゃないかと思う。